日本放送協会会長

海老沢 勝二 殿

 

 

前略 旧臘送付致しました「公開質問状」に対する「NHKからの回答」に対して「反論」を送付しましたのに対し、一月二十九日付にてNHK視聴者ふれあいセンター長鈴木敏光氏より再反論がありましたので、それに対して再反論申しますので御高覧御願ひ致します。                        匆々

一月二十九日日付「NHKからの再反論」に対する再反論

「NHK回答」に対して一月九日付で当方が送付した「反論」は全九項目にわたつて詳細かつ具体的に理由を述べてゐるのに対し、一月二十九日付「NHKからの再反論」は〈北朝鮮の呼称〉〈拉致事件報道〉についてのみ反論してをり、他の七項目については一行の記述さへない。これは右七項目についてNHKが反論出来なかつたことを意味するに他ならない。とすれば、右七項目即ち公開質問の(1)(2)(5)(6)(7)(8)(9)項目について、NHKは己の非を認め、明確な陳謝を放送に於て為すべきである。右七項目について沈黙することで責任を曖昧にすることは公共放送として許されぬ筈である。

2〈北朝鮮の呼称について〉

昨年十二月二十六日付「回答」では「北朝鮮」は国名の略称ではないと云ひ、「朝鮮民主主義人民共和国」といふ云ひ直しの正当性を陳弁してゐたのに、この「再反論」では一月一日から「北朝鮮」の呼称のみで正式国名への云ひ換へは行はないことにしたと、俄かに豹変した主張を展開してゐる。その豹変の理由が、当方が「公開質問状」や「反論」で主張したのと全く同じであるのには苦笑を禁じ得ないが、それはさて措き、一月一日から云ひ換へを止めたのであれば、一月九日付の当方の反論を待つまでもなく、速かに当方に対して変更した旨を一報するのが礼儀ではないか。或いは「再反論」に於て「貴殿が主張されてゐました通り斯く斯く変更致しました」位の文言を加へるのが論争の作法ではないか。

いや、当方への仁義はさて措いても、そのやうな重要な変更は、先づ以て放送の中で視聴者にはつきり説明する責任がNHKにある筈だ。NHKには、北朝鮮の云ひ換へ中止が、視聴者に気付かれぬやうに、ニュース原稿を巧妙に操作してきた疑ひがある。小生自身、北朝鮮の呼称変更に薄々感付きながらも半信半疑の儘でゐたが、一月二十八日の正午のニュースで変更されたことを確認し、NHK視聴者コールセンターに電話で問合はせて一月一日からの変更を知らされた始末である。多くの視聴者から疑問、要望、批判のあつた報道方針を、ある日こっそり変更し、視聴者に何の説明も致さぬとは公共放送として無責任の極みであり、視聴者をこれ程馬鹿にした話はない。この件に関するNHKの「再反論」は反論どころか、弁解にすらなつてゐない。

3〈拉致問題の報道について〉

NHKはこの問題での弁明に反論本文五十九行の中何と四十九行を割く熱心さである。平成九年三月の家族会結成から翌十年七月までに総合テレビで八十本以上、〈ニュース7〉だけで約三十本の拉致関連報道を流したとして、「無関心」といふ当方の批判に反撃してゐる。だが、これは全く反論になつてゐない。その理由は

(一)ただ、「放送」したと云ふのでは、NHKが「無関心」でなかつたことを立証することにはならない。ニュース内容をどのやうに編集して流したのか(何をカット、何を強調、誇張したかを含む)を確認せずに、ニュースの本数だけで拉致問題に対するNHKの報道姿勢を云々することは出来ない。現に昨年九月十七日の小泉訪朝まで「疑惑」「いはゆる」付きで拉致事件を報道してゐたのである。

(二)この期間に拉致問題で一度も特番を組んだことのない事実が、拉致問題に対するNHKの冷淡さを証明する。例へば慰安婦問題での特番の多さと比べてみれば、熱度の差には歴然たるものがある。

(三)NHKが主張する右の放送回数は本当なのか。NHKの一方的な云ひ分だけでは証拠にならぬ。八十回なり三十回なりのビデオテープを提出して立証する義務がある。
 仮に総合テレビで平成九年三月から十年七月まで十七ヶ月七十週間に八十回の拉致報道ニュースを流したとしても、その間にニュース番組は一日十三回として六、三〇〇回以上もある。その中には視聴率の極めて低い早朝深夜のニュースや地方別ニュースも首都圏だけでも二、〇〇〇回ほど含まれてゐる。斯様なニュース番組編成の中で、全国を通じて八十回流すことがどれだけの意味や効果を持つと云ふのだらうか。ここにNHK反論の大きな欺瞞があることを指摘しておく。
 何れにせよ、斯く斯く放送したと云ふ以上、そのビデオを提出して自らの反論を証明すべきである。因に当方はNHKを批判するに当つては全てビデオと関連「NHKウオッチング」掲載の『正論』号数を示して挙証責任を明らかにしてきてゐる。

要するにNHKは他の七項目については口を緘し、〈拉致問題の報道〉についてのみ異常にこだはり、当方の具体的な批判に対して証拠も示さずに「事実誤認」「NHKへの侮辱」等と開き直り、果ては中村に「立場を自覚」せよと説教するに至つては、これが公共放送の視聴者への対応かと目を疑ふばかりだ。のみならず、他の重要七項目には一言も言及せぬつまみ食ひ#ス論には反論としての価値はない。批判に対して感情的に反撥するのではなく、公共放送にふさはしい冷静で知的な弁論をされるやう忠告申上げる。

平成 十五 十七

(代表質問者)NHK報道を考へる会代表      

獨協大学教授            

中村  粲

                  NHKに物申す市民ネットワーク代表 

小林 幸子

神奈川大学教授           

小山 和伸

日本会議東京都杉並支部長      

和田  昭

  NHK報道から子供達を守る会代表  

松浦 芳子

弁護士               

高池 勝彦

弁護士               

南出喜久治

弁護士               

稲田 朋美

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